バフチン著作の日本語訳リスト

著作年代 題名 訳者 所収
1919 芸術と責任 佐々木寛 『ミハイル・バフチン全著作 第1巻』 11-15
1920年代初め 行為の哲学によせて 佐々木寛 『ミハイル・バフチン全著作 第1巻』 17-86
1920年代初め 作者と主人公 斎藤俊雄
佐々木寛
『ミハイル・バフチン著作集 第2巻』
美的活動における作者と主人公 佐々木寛 『ミハイル・バフチン全著作 第1巻』 87-368
1924 言語芸術作品における内容,素材,形式の問題 伊東一郎 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 7-111
『ミハイル・バフチン全著作 第1巻』 369-455
1925 学問のサリエーリ主義 形式的(形態学的)方法について (P.N.メドヴェージェフ) 佐々木寛 『ミハイル・バフチン全著作 第2巻』 21-45
1926 生活の言葉と詩の言葉 斉藤俊雄 『ミハイル・バフチン著作集 第1巻』 213-262
生活のなかの言葉と詩のなかの言葉 桑野隆 『バフチン言語学入門』 7-54
1927 フロイト主義 批判的概観 (V.N.ヴォローシノフ) 磯谷孝 『ミハイル・バフチン著作集 第1巻』 7-212
『ミハイル・バフチン全著作 第2巻』 47-215
1928 西欧における最新言語学思潮 桑野隆 『バフチン言語学入門』 55-98
1928 文芸学の形式的方法 (P.N.メドヴェージェフ) 桑野隆
佐々木寛
『ミハイル・バフチン著作集 第3巻』
文芸学の形式的方法 社会学的詩学のための批判序説 (P.N.メドヴェージェフ) 佐々木寛 『ミハイル・バフチン全著作 第2巻』 217-516
1929(1963) ドストエフスキーの詩学 望月哲男
鈴木淳一
『ドストエフスキーの詩学』
1929 トルストイの劇作品について 塚本善也 『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 11-25
1929 トルストイの『復活』について 塚本善也 『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 27-60
1929(1930) 言語と文化の記号論 マルクス主義と言語哲学 (V.N.ヴォローシノフ) 北岡誠司 『ミハイル・バフチン著作集 第4巻』
マルクス主義と言語哲学 (V.N.ヴォローシノフ) 桑野隆 『マルクス主義と言語哲学』
1930 芸術のことばと文体論 小林潔 『バフチン言語学入門』 99-219
1934-35 小説の言葉 伊東一郎 『ミハイル・バフチン著作集 第5巻』
『小説の言葉』 7-295
1936-38 教養小説とそのリアリズム史上の意義 佐々木寛 『ミハイル・バフチン著作集 第7巻』 5-101
『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 61-140
1937-38,1973 小説における時間と時空間の諸形式 北岡誠司 『ミハイル・バフチン著作集 第6巻』
『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 141-409
1940 小説の言葉の前史より 伊東一郎 『ミハイル・バフチン著作集 第7巻』 135-205
『小説の言葉』 297-365

『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 414-497
1940 ラブレーとゴーゴリ 言葉の芸術と民衆の笑いの文化 佐々木寛 『ミハイル・バフチン著作集 第7巻』 103-133
1940(1965) フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネサンスの民衆文化 川端香男里 『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』
杉里直人 『ミハイル・バフチン全著作 第7巻』
1941 叙事詩と長篇小説(ロマン) 小説研究の方法論について 川端香男里 『ミハイル・バフチン著作集 第7巻』 207-270
叙事詩と小説 小説研究の方法論をめぐって 杉里直人 『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 469-521
1952-53 ことばのジャンル 佐々木寛 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 113-189
1959-61 テキストの問題 言語学,文献学および他の人文諸科学におけるテキストの問題.哲学的分析の試み 佐々木寛 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 191-239
1961 ドストエフスキー論の改稿によせて 伊東一郎 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 241-278
1970-71 1970-71年の覚書 新谷敬三郎 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 279-319
1974 人文科学方法論ノート 新谷敬三郎 『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 321-347

『ミハイル・バフチン著作集 第1巻』 新時代社 1979.7
『ミハイル・バフチン著作集 第2巻』 新時代社 1984.12
『ミハイル・バフチン著作集 第3巻』 新時代社 1986.11
『ミハイル・バフチン著作集 第4巻』 新時代社 1980.10
『ミハイル・バフチン著作集 第5巻』 新時代社 1979.1
『ミハイル・バフチン著作集 第6巻』 新時代社 1987.7
『ミハイル・バフチン著作集 第7巻』 新時代社 1982.2
『ミハイル・バフチン著作集 第8巻』 新時代社 1988.3
『ミハイル・バフチン全著作 第1巻』 水声社 1999.2
『ミハイル・バフチン全著作 第2巻』 水声社 2005.1
『ミハイル・バフチン全著作 第5巻』 水声社 2001.4
『ミハイル・バフチン全著作 第7巻』 水声社 2007.6
『バフチン言語論入門』 せりか書房 2002.8
『小説の言葉』 平凡社ライブラリー 1996.6
『ドストエフスキーの詩学』 ちくま学芸文庫 1995.3
『マルクス主義と言語哲学【改訳版】』 未来社 1989.4
『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』 せりか書房 1973



684. ミハイール・バフチーンの世界
カテリーナ・クラーク+マイケル・ホルクイスト(川端香男里・鈴木晶 訳)
せりか書房 1990.1
★★★
 Katerina Clark & Michael Holquist, Mikhail Bakhtin (1984)の訳.
 バフチーンの伝記と著作解説.20世紀前半のソヴィエト・ロシア思想史は全く知らないので,知らない人ばかりが出てきてたいへんですが,まあ,しょうがない.基本的にバフチンの伝記としてはかなり初期のものに属するようですが,新しいものが必ずしも評判が良くないようなので,とりあえず日本語で読めるこれをおさえておくべきでしょう.
 バフチンの「始まりも終わりもない」という考え方は,優れた芸術を創る人には共通した認識なのかもしれません.私も別のコースからそこに行き着いたばかりですが,だからこそ,今ならバフチンを理解できるような気がしています.というか,今ならそれを自分で表現できるような気がしています.

703. ドストエフスキーの詩学
ミハイル・バフチン(望月哲男・鈴木淳一 訳)
ちくま学芸文庫 1995.3
★★★
 М.М.Бахтин, Проблемы поэтики Достоевского (2nd ed. 1963)の訳.
 昨今のドストエフスキーばやりにのっかるわけではなく.文庫本にして600ページ弱,その最初の100ページに1週間かかりましたが,残りは3日で読めました.バフチンは馴れるまでがそうとう辛いのです.しかし,これはバフチンにしては読みやすい方の著作だと思います.バフチンに関しては,著作を年代順に読もうとすると痛い目に遭います.だから,この著作がもっとも良い入り口となるでしょう(入門的,という意味ではなく).それは,話が抽象的ではなく,ドストエフスキーの著作というきわめて具体的な例によって説かれているからです.
 ドストエフスキーの著作が「ポリフォニー的」である,というポリフォニー文学論と,カーニヴァル論というバフチンの有名な2つのテーゼが共に論じられています.そういうことなのだな,とは思うのですが,今の私にはちょっとピンとこない.むしろ,モノローグ的な小説などあるのか,と思ってしまうからです.モノローグかポリフォニーかは,テクストの問題ではなく,そういう読みなのではないかと.無理矢理対話的に読んでみる,という手法もおもしろかろうて.

706. マルクス主義と言語哲学 言語学における社会学的方法の基本的問題 【改訳版】
ミハイル・バフチン(桑野隆 訳)
未來社 1989.4
★★★★★
 В.Н.Волошинов,Марксизм и философия языка(1929年初版,1930年第2版)の第2版からの訳.著者はヴォローシノフ名義ですが,バフチンの作品であることが認められています.バフチンは,一時期著作を出しにくかったことがあり,そのために友人たちの名義で著作を著しました.なので,バフチンの友人たちの出版物の中のどれがバフチンの真作かという,「著作権問題」が生じてしまいました.ともかく,この著作はバフチンのものであることはほとんどの人が認めているものです.
 バフチンの言語論関係の著作としては『バフチン言語学入門』 (せりか書房)や『ミハイル・バフチン著作集第8巻』(新時代社)がありますが,この著作がもっとも詳しく書かれています.そして,扱う範囲の大きさも魅力です.第1部が心理学批判を通じての内言論,第2部が言語学批判を通じての社会学的言語論,第3部がジャンル論となっています.特に,心理学でのヴィゴーツキーとの親近性は印象的です.ホルクウィストによれば,共通の影響源があるとのことです.
 基本的にはテーゼの提示なのであって,納得いくほどの論証も具体例もないのですが,それでも何か訴えてくるものがあります.これを説明しろ,というと,とてもつまらなくなるか,とても複雑になる(おそらくバフチンの説明より)か,なので何も言わず.バフチンに答えることで私は私の問いかけを作り出します.