会長挨拶

会長就任のご挨拶

板 谷 清 司*

1. はじめに

 本年6月から吉澤会長の後を引き継いで、本学会の会長を拝命することになりました。副会長には片山恵一氏(東海大学)、福島秀男氏(太平洋セメント)および河本邦仁氏(名古屋大学)を加え、さらに新しい理事の方々をお迎えして新体制のもと活動を始めました。歴代会長の輝かしい業績には到底及ぶことはできませんが、本学会の発展に全力で取り組む所存ですので、何卒宜しくお願い申し上げます。
 さて、本学会は、昭和25年(1950)石膏研究会として発足以来、石膏石灰研究会(1953 〜 1965年)、石膏石灰学会(1965 〜 1995年)、さらに無機マテリアル学会(1995年)と名称を変えて現在に至っています。この間、初代の故永井彰一郎会長を始めとして、第12代の吉澤慎太郎会長まで、歴代の会長のもと本学会はセッコウ、石灰、セメントおよび地球環境のそれぞれの分野に対して社会に貢献して参りました。昨年は本学会が設立して60周年を迎え、盛大に記念祝典を催しましたが、これもひとえに平素の活動に対して企業・会員の皆様のご支援の賜物と感謝申し上げます。
 本年3月11日に発生した東日本大震災、さらに福島第一原子力発電所からの放射能性物質の漏えい問題は、本学会の新たな10年に向けての活動に貴重な教訓を与えているのかも知れません。福島第一原子力発電所より漏えいした放射能性物質による大気、海水および土壌汚染は、単に日本だけの問題にとどまらず、世界の環境に深刻な影響を及ぼしつつあります、このような状況の中で本学会は地球環境の問題に積極的に取り組んでいく必要があるように思います。例えば、セシウムなどの放射性物質の除去は我が国が緊急に取り組む課題ですが、新聞によると放射性物質の吸着・除去にゼオライトなどの無機材料が使用されていることが報道されており、放射性物質の除去に対して本学会が貢献できる環境が生まれつつあります。本会としてもいろいろな情報発信ができればと考えています。会員の皆様の英知と、積極的なご提案をお願い申し上げます。

2. 本学会の取り組みについて

 学会の更なる活性化のための取組みを挙げたいと思います。まず、吉澤前会長が進めてきた方針を受け継ぐとともに、(@) 学会誌の更なる充実、(A) 産学官の連携強化、および(B) 国際的な連帯強化を取り組みの主な課題に挙げたいと思います。第一に学会誌の充実について述べますと、本学会では2008年より従来のB5伴からA4判に雑誌サイズを拡大し、内容の充実に努めて参りました。会員の皆様には雑誌サイズの拡大についてご好評頂いていますが、課題として本学会誌への投稿数の減少が挙げられます。第一線で活躍されている方々に論文の投稿や、総説・解説記事をご執筆頂き、学会誌のレベルを上げていくことが本学会の重要な課題と考えています。会員の皆様にはぜひとも学会誌の充実にご協力を賜りたいと思います。一方、本学会では過去に出版した記事のアーカイブ化を進めており、現在独立行政法人科学技術振興機構のアーカイブに創刊号から2007年までの学術的記事を全文公開しています。会誌の公開については大変難しい課題がありますが、今後も検討しながら情報発信していきたいと思います。
 第二に、産学官の連携強化について吉澤前会長が就任の際のご挨拶の中で、本学会の活動では産学官の連携が極めて重要であることを強調されています。産学官の交流を活発化し、情報交換できる場を提供していくことは本学会の使命と考えています。例えば、学術講演会への積極的な勧誘や、見学会の促進など、第一線で仕事をされています研究者に対して魅力的な情報提供の場を設けていきたいと思います。
 第三に、本学会と国外の研究機関との連携を深め、国際会議を開催するための基礎を築いていきたいと思います。本学会は、2004年10月にDutch Ceramic Society(オランダ)と共催でInternational Symposium on Inorganic and Environmental Materials 2004 (ISIEM2004)の国際会議をEindhoven(オランダ)において開催しました。この国際会議では約250名の方々にご参加頂きましたが、オランダのような遠方のヨーロッパで開催されたにも関わらず、その半数を日本人が占めるなど、多くの日本人研究者に参加して頂きました。さらに、この国際会議は、本学会会員だけでなく、非会員の研究者の方々にも大きな関心を寄せて頂きました。国際会議の開催は、本学会の活動を活性化し、さらに海外の研究者との交流を深める絶好のチャンスとなりますので、本学会の更なる発展のためにも国際会議の開催を推進していきたいと思います。国際会議の開催は、多くの方々のご協力が必要となり、またその準備にも多くの時間を要しますが、ぜひとも会員の皆様には国際会議の開催に向けてご支援をお願い申し上げます。

3. 本学会の課題について

 本学会の抱えている課題を挙げてみますと、会員数の減少と財政の問題が挙げられます。まず、本学会の会員数の問題ですが、正会員数は残念ながら減少を続けており、現在697名(学生会員数:119名)となっています(2011年3月24日現在)。会員数の減少に対してその歯止めとなる特効薬はありませんが、会員数の減少は本学会活動の根幹に関わる財政とも直結する問題です。非会員の方々が本学会への入会に対して関心を持つポイントは、学術講演会および学会誌の内容ではないかと思います。言い換えれば、本学会に関心を持って頂けるかどうかは、本学会から発信する情報の種類と質にかかってきます。学術講演会と学会誌論文の場合には、いかに先端的な情報を提供できるのか、また総説・解説の場合には技術的な情報を平易に提供できるのか、常日頃の学会活動が問われるところです。
 ここで、ホームページの閲覧回数について興味あるデータがあります。2002年9月に本学会のホームページを立ち上げましたが、総閲覧回数は、2003年に約1,500件であったものが、2010年に約15,500件に達しています。特に、2010年にホームページをリニューアルして以来、閲覧件数は急速に増加しています。このように、ホームページを通じて本学会の活動に関心を寄せている方々が積極的に入会して頂ける環境作りが必要となってきます。学術講演会および学会誌に関わる情報を、ホームページを通じて積極的に発信し、会員数の増加につなげていきたいと思います。
 前述のように、会員数は本学会の財政とも密接な関わりを持っています。昨年度の実績で申し上げますと、会費収入は14,295,000円でしたが、この収入額は総収入(26,665,858円)の約46%に相当します。会員数の減少は本学会の運営費の縮小につながり、さらに学会活動に対しても制約が出てくる可能性があります。会員の方々に多くの情報をご提供するためには、財政の健全化と安定的な財源の確保が必要不可欠です。ぜひとも、会員数を増強し、財政基盤を強固なものにしていきたいと思いますので、会員の皆様には会員数の増強にご協力をお願い申し上げます。

4. 終わりに

 本学会は創立以来60周年を超え、新たな時代に入ろうとしています。東日本大震災および福島第一原子力発電所からの放射性物質の漏えいに関わる報道を目にするたびに、地球環境がいかにかけがえのないものであるか、また人々の生活を支えるエネルギーがいかに重要であるか、改めて気づくことも多いかと思います。本学会がつぎの10年に向けた活動方針を考える時、このような問題への対応は避けて通れないと思います。つぎの10年間に向けて、吉澤慎太郎前会長の進められた路線を踏襲し、産学官や、国内外の学協会とも連携し、学会活動の強化と会員数の増強について会員の皆様とともに取り組んでいきたいと考えています。会員の皆様方の御支援、御鞭撻を何卒宜しくお願い申し上げます。

*本会会長 上智大学理工学部教授 工学博士